第2回環境エピゲノミクス研究会 16:30-18:30
場所:静岡県立大学 看護学部棟2階13215講義室
テーマ 「これからの環境エピゲノミクス試験・研究」
話題提供 1.「Genetics からEpigeneticsへ」
澁谷 徹 (”Tox21”研究所)
2.「化学反応によるシトシンのメチル化とエピジェネティクス」
葛西 宏・河井一明(産業医科大学)
総合討論 司会 須藤鎮世 (就実大学・薬学部)
当日記
今回の定例会は、JEMS第38回大会の前日に参加者14名とやや少なかったものの、
「メチル化DNA検出法」の発見者早津先生、JEMSの重鎮石館先生も参加され、 熱心な討議が展開された。
1.澁谷代表幹事より、環境Epigenome研究の意義について分かりやすく解説があり、
たとえば発がんにしても遺伝生殖毒性においてもMutagenだけでなくEpi-Mutagen
の影響、さらには暴露・発現時期(世代)といった要素を考えていかねばならないと
いう概念が示された。
2.葛西先生、河井先生より、これまで酵素的なメチル化機構は知られていたが、環境
物質が活性酸素を介しC-5メチル化することを初めて捉えた例が示された。其の中には
DMSO,CuOOH,ButOOHなどがあり、さらにメチオニンスルホキシドのように内在的な
物質によってもこの現象が引き起こされることが示された。
3.総合司会の須藤先生からも、ウシの核移植による発生時に正常発生できないケース
ではメチル化異常がおきていること、アマミトゲネズミの性染色体はともにXOであり
ながら、spy遺伝子のメチル化,非メチル化により、雌雄が発現していると考えられる例
など興味深いEpigeneticsの現象を紹介していただいた。
総合討論では、
・メチル化がなぜCpGの領域に特異的なのか? −おそらく非特異的だが例えばDNMTのような
酵素によって、他の領域のメチル化は速やかに脱メチル化されるのではないか?
・活性酸素によるたとえば8-HGなどの修飾から変異が起きる頻度とC-5メチル化のおきる頻度は
どのように見積もられるか?−8-HG などの方が何倍も頻度は高いが、修復酵素が存在する。
一方C-5メチル化は修復酵素がないので蓄積していく分、発がんなどのリスクにつながりやすいと考えられる。
・C-5メチルは第5塩基と捉えることもできるが、もうひとつC-5ヒドロキシメチルも存在し、第6塩基というべきもの
もあるのではないか? − 今後検証にトライしてみる。 ことなど質疑応答があった。
また、参加者からの感想としては世界的な傾向からみると日本の環境毒性学 でのEpigeneticsの取り組みはJEMSでの演題数をみてもやや遅れている感がある、というものもあった。
会の内容は懇談会を含め大変興味深く、また示唆に富むものだったように思います。次回の定例会にはより多くの 皆様方の参加をお願いいたします。 (HY)