続澁声徹語 第37回 「ABC予想」

 望月新一教授(京大・数理解析研究所)によって「ABC予想」がいよいよ解決されたということである。これは「a +b=c という自然数の組については、

種々の関係が成立する組(詳細略)は、たかだか有限個しか存在しないであろう?」で終わる、数学界で重要な未解決な問題であるという。「存在しないで

あろう」などという結論は大変奇妙でどうやって証明したのだろうか。

 

望月先生は2012年に全く新しい数学的な手法を使ってこれを解決されたとのことである。これはアインシュタインの相対性理論に匹敵するような、画期的な

数学理論で「宇宙数学」というらしい。数学の門外漢にはさっぱり理解できないが、とにかく数学の世界では大変な成果なのであろう。

 

 論文は600頁を越えるもので、インターネットで予備的な論文が投稿された。6年以上の複数の研究者による査読が行われ、誤りがなかったことが認められ、

やっと正式に出版されるとのことである。よく分からないが異次元の出来事のようだ。途中で他の数学者からのクレームがあったが、それは無事にクリアでき

たらしい。

 

 京大の数理解析研究所は日本で唯一の数学の研究機関で、数学界で著明な賞であるフィールズ賞(40歳以下)を二人が受賞しているが、望月先生はこれには

興味がなく、あえて取られなかったという。私は以前、京都でゆっくり滞在したいことと、高等数学の世界を覗いてみたいとの望みから、数理解析研の「入門基

礎数学講座」を3年間聴講した。案の定、講義が始まるやいなや、数式は完全に理解できなくなり、講師は広い黒板に数式を書き続けていった。こうなると一種

の恍惚状態に陥ることが不思議であった。

 

 この講座は高校の数学の先生や数学に優れた高校生を発掘することが目的であったが、出席するだけで所長名の修了書をいただくことが出来た。私は3枚持って

いるが、数学の試験をされたのなら全くお手上げであっただろう。私にとって数学は、今もって魅力はあるが不可議な存在なのである。

     蝉時雨数式あふれし大黒板  徹  12/19/20)

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