続澁声徹語 第27回 「神保町」

 東京でどこが一番好きかと聞かれれば、神保町と答える。まず、「学士会館」が好ましい。学士会に入っていなくても、このホテルはに泊まることは出来る。

今風のホテルではなく、昔に戻ったような雰囲気であるのが好ましい。神保町にはゆったりと時間が流れているようである。この周囲には「東京大学発祥の地」

や「野球発祥の地」やの記念碑があり、日本の文明開化の時代が感じられる。

 

最近学会が「神保町」の一ツ橋講堂で行われることが多く、よくここに通ってくる。しかし、ここの地下鉄の駅は複雑で、いつでも同じ出口から地上に出たこと

はないのだ。そのため地上に出てからまごつくが、少し歩いてみるとすぐに土地勘を取り戻すことが出来る。この周囲には学校や出版社などが多く、とても文化

的な町であるとの感があり、とても好ましい雰囲気を醸しだしている。

 

「神保町」界隈は好きだが、実はあまり古書店を廻ったことはない。好きな本を見るとついつい買わずにはおられなくなってしまうからである。「君子危うきに

近づかず」といったところである。しかしお茶の水駅前の「茗渓堂」には、山の古書が揃っており、よく足を運んだ。山好きはどういう訳か本好きが多い。ヒマ

ラヤ遠征などをすると、その記録を本にして出版することが多かったこれは。普段から、克明に山行を記録することが習慣になっているせいだろうか。

 

 わたしは、センターを退職して18年目に入ったが、やっとこれまで集めてきた本を処分する決心をした。断遮利である。本を大まかに整理して、残す本と処分

することは決めたのだが、古本屋に電話をする決断がなかなかつかないままでいる。蔵書を整理していると、つくづく私は「積読派」であることが分かった。

  

 「神保町」の裏通りに、いつ行っても長い行列が出来ている店がある。その店は「唐揚げ屋」らしいのだが、いわゆるネットでの評判を伝え聞いて並んでいるの

だろう。古本を買うときには一冊一冊中身を点検しながら、自己の判断で本を買うものだと思う。古本屋の並ぶこの町には、この異様な行列は相応しくない。自分

で食べるもの位、自分で判断しないのだろうか?そういえば、若い人たちには、神保町は「グルメのまち」として有名になっているらしい。

漱石忌つひ足伸ばし神保町    徹   (10/09/20

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