続澁声徹語 第15回 「平松礼二画伯」

 先日、鎌倉にお住いの平松礼二画伯に、表紙と裏表紙とが私の水彩画の「澁声徹語」を思い切ってお送りした。これは、この本を周囲の方々にお送りした

ところ、意外にも好評だったので、旭丘高校の同期で町立湯河原美術館の名誉館長であり、湯河原でもたびたびお会いしている平松画伯にもと思ったわけで

ある。

 独特の万年筆の字で、ご返事の葉書をいただき恐縮した。平松画伯は、独特の色遣いと精密な日本画で、一度日本から西欧に渡った浮世絵風の絵画様式を、

再び日本の美術に取り入れている。これは「平松ジャポニズム」と言われる独自の画風である。町立湯河原美術館に「平松礼二館」を持っておられる。

 

 平松画伯は、その芸術性をフランス政府からも高く評価され、モネのアトリエがあったジベルニィーのモネ美術館で、モネとの共同展覧会が2回ほど開催

されている。これは日本人の芸術家としては大いに誇るべきことで、画伯の絵画が、芸術の国フランスで立派に認められているという証しであろう。

 

彼は多数の自作の絵画を湯河原美術館に寄贈され、美術館ではその中からテーマを作って、一年中展示されている。美術館には彼のアトリエもあり、以前は

平松画伯と来館者とが直接会話をすることも出来た。アトリエには、彼の習作途中の絵もあり、また溶かれたままの絵具の皿などが、たくさん展示してある。

 

 平松画伯からは「澁声徹語」を大層ほめていただいき、高校で同期だった、「大鐘稔彦氏」と並べて評論されるという光栄に浴した。もっとも水彩画につ

いてはノーコメントであった。ちなみに大鐘氏は京大の医学部出身の著名な外科医で、「高山路蘭」のペンネームで、「孤高のメス」などのベストセラーを

書いておられ漫画にもなった。お二人は高校の柔道部で共に汗を流した間柄であるという。

 

最近、平松さんは、湯河原のさまざまな名所を描き、町民からの投票で「湯河原十景」を選ぶという企画が行われた。私は水彩画をやっているので、これら

の作品を参考にさせていただいている。しかし、彼の素描を拝見して、それらはとても素晴らしいと思う。優れた画家は素描からして違うのである。

    美術館モネの睡蓮白五つ    徹  (7/17/20

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