「環境エピゲノミクス研究会」第1回定例会
2009年5月15日(金)13:00−17:30
静岡県立大学(はばたき棟3F 特別会議室) JR草薙駅より海側徒歩15分
日 程
13:00 総会 (会則の承認)
13:30 特別講演 「Epigenetic Toxicology の重要性」
森 千里 先生(千葉大学大学院・医学研究科)
司会:八木孝司(大阪府立大学・先端科学研究所)
15:00 勉強会 「今なぜEnvironmental Epigenomics(環境エピゲノム)なのか?」
話題提供:
1. 「Epigenetic異常を引き起こす物質:Epimutagen」
高田江里子 (国立がんセンター・研究所)
2.「環境ストレスとEpigenetics−ヒストンアセチル化と発癌の
伊吹裕子 (静岡県立大学・環境科学研究所)
3.参加者による討論
4.「まとめ」
澁谷 徹 ("Tox21"研究所)
進行: 下位香代子(静岡県立大学・環境科学研究所)
布柴達男(東北大学大学院・生命科学科)
18:00 懇親会
・5/15 第1回定例会 報告
当日は木苗学長もご参加いただき、また、多くの学生さんにも聴講いただきました。
・ 講演・討議内容:
一部を掲載させていただきます。
当日記
渋谷さんのお誘いで、epigeneticsのことを少し勉強してみよう かなという比較的軽い気持ちで幹事にならせて頂いたので すが、第1回定例会では、epigeneticsの基礎から応用ま で、盛りだくさんに勉強させて頂きました。
森先生のご講演では、epigeneticsと内分泌撹乱物質との関わ りやリスク評価などへの応用面 についてもお話しいただき、 大変興味深かいものでした。
続いての高田会員のお話も大変素晴らし い教育的なプレゼンテーションで、epigeneticsの基礎から epigenetics異常による疾患、 さらにepigeneticsに影 響を与える化学物質epimutagenに至るまで幅広く勉強させて頂 きました。
そして伊吹会員のお話では、そのepigenetics研究 のケーススタディともいえるご発表で、これまでのgenetics研 究とepigenetics研究の相互関係、あるいはmutagenとepimutagenの相互関係というか、複合影響を考える上で興味深い実験例 でした。そして最後に渋谷会員がまとめを加えてくださっ て、環境変異原研究を行ってきた我々が、今後この epigeneticsや epimutagenをどのようにとらえ、研究に取り組むべきかと言う方向性、 あるいは可能性を示して頂け たと思いました。
全体にわたって大変理解 しやすく epigeneticsの基礎から学ぶための講演会であったと思います。懇親会に参加できなかったことは残念でしたが、 本当に多く の ことを学ばせて頂いた会でした。私自身これからの自分の研究にこのepigeneticsをどのように関連させていくかはまだ これからですが、是 非とも意識の中にepigeneticsやepimutagenとい う概念をおいておきたいと思いました。本当にお疲れさまでした。 (T.N.)
討議内容
・「環境ホルモン」などのepigenetic 作用に閾値の存在は?
→安全域は求められるとの前提 DNAメチル化などは all or nothing でない。
・DNAの保護タンパク、精子はプロタミン、卵子はヒストン。Epigenetic作用に差がでるか?
・DESのepigenetic作用は活性酸素誘発→変異と別物?
・Skinnerの経世代影響(雄生殖能)はラット。マウスではうまくいかない?マウス(C57BL)
ではF2の 口蓋裂(CP)
・雌側の経世代的影響研究はこれから
Epigeneticsの定義: 1.直接DNA配列を変化させることなくDNA発現に影響を与える。
2.細胞分裂を経てもその影響が伝播する。
その種類は今のところ
T. DNAメチル化
U. ヒストン修飾(アセチル化、リン酸化、メチル化等)
に大別される。
ただし、2.について証明されているのはDNAメチル化酵素(Dnmt)の機能解明が進んでいる
T.のみ。
・発生異常、代謝疾患等への関与-Valproic acid 抗てんかん薬であるがHDAC阻害作用
・Valproic acid ,Trichostatin A など HDAC 阻害剤の抗癌作用
HDAC阻害剤の構造は?
1)脂肪酸:Butyrate,Valproic acidなど
2)ヒドロキサム酸:Trichostatin A, SAHAなど
3)環状ペプチド:Tapoxin,apicidnなど
・紫外線PUVA + HDAC阻害剤 では染色体2重鎖切断(DSB)が抑制
修復阻害とp21発現の関連は?
・ヒストンH3 のアセチル化- G1特異的:そのほかのヒストン修飾も細胞周期特異的か
・Epimutagen 検出系の開発― ヒストン修飾、DNAメチル化の区別が難しい。
単純にエピジェネティックな変化を検出する系でよいのでは?
・環境変異原研究の手法が応用できるのではないか?
→温故知新 JEMS 第38回大会のテーマにもなっている。